• 弦巻啓太

全部観て欲しい。


現在弦巻楽団は#28 1/2 として、『リチャード三世』に取り組んでいます。これは演技講座の3学期に通常行っている「舞台に立つ」という3ヶ月集中講座でやっているシェイクスピアに取り組む企画を、今回は2学期である9〜11月でやろう!という企画です。

初の2学期開催、そして初の札幌劇場祭参加です。受講生は全部で28名。うち27名が衣装小道具を作りつつ、大道具を誂え、音楽を奏で、宣伝をし、演じます。いままで(『夏の夜の夢』『ヘンリー六世』『コリオレイナス』)とは作品の質が違い、演出する自分も手こずりながら一丸となって作っています。

来週23日から本番です。勢い余って(?)サンピアザ劇場で6ステージも組んでしまいました。われながら無謀な挑戦です。

受講生と向き合っていると、改めて気づかされることばかりです。教えるとは教えられること、とはよく言ったもので、自分の足りないところを鏡のように見せられている気がします。話し合い、考え、イメージのズレを埋めようとするうちに、そのズレそのものが豊かさであることに気づいたり…。

何に手こずっているかといえば、この『リチャード三世』という作品がこれまでより情念が背景になっているからだと思うんです。これまでの作品の登場人物が持っていた欲望がある種理にかなっていたとすれば、リチャード三世の持つ欲望は理にかなっていません。損や得じゃなく、王になりたいと計略し、実際にその座を夥しい血を流しながらつかむリチャード。しかし、ラストの戦場でその手にした国を、王の座を「くれてやる!」と叫ぶリチャード。その姿にどこまで迫れるか、が問われています。

シェイクスピアの四大悲劇では『オセロー』に最も演出するハードルを感じます。それは、この作品もそうした「理にかなっていない欲望」を原動力としているドラマだからだと思います。

構造を立ち上げるだけでは届かないドラマ。

関係性を結ぶだけでなく、その結び方にドラマが問われます。

本番まであと十日。

弦巻楽団としては年内の活動は『リチャード三世』でフィニッシュですが、ゆっくりはしていられません。と言うか既にバリバリと動き出しています。弦巻楽団#29は、なんと3回目の上演、通算では5回目の上演となる『ユー・キャント・ハリー・ラブ!』です。

2018年2月に、「演劇シーズン2018冬」の、レパートリー作品として上演されます。ありがたいことです。レパートリーシステムになって3本目の作品としてご指名いただきました。レパートリー作品としては初の原作のないオリジナル脚本での上演になるので、ガッカリだけはされたくないなと思っています。 今回は主役の奥坂教授に青年団の永井秀樹さんをお迎えしてお送りします。また、助手ののり子に楽団2年ぶりの柴田千佳、そしてヒロイン冬樹里絵、学生の堺、編集者沓掛には2016年冬の演劇シーズンでも演じた3名、岩杉夏、遠藤洋平、小林なるみの皆さんが揃って登場してくれます!

既に諸々の撮影を済ませ、あちこちで宣伝が始まってます。

楽団としては今までにない大きな劇場を用意していただいてます。これもさらに無謀な挑戦です。どうか劇場で、札幌で生まれたこの小さな作品が大きなステップを越える瞬間を目撃してください。いえ、その瞬間を一緒に作り上げてくれたら嬉しいです。

わかりにくいとよく言われます。僕自身のことです。自分としてはこんなにわかりやすい人はいないだろうと思うのですが、なんだか何かがかけ違っているらしく、分かりにくいとよく言われます。

そんな自分のせいか劇団の活動もわかりにくいみたいです。活動というか、方針が。作品はそうじゃないと思いたいのですが…。

自意識過剰だとよく言われます。自己顕示欲が強いと思われがちです。確かに弱くはないかもしれない。自分の話ばかりしている、とも言われます。しかし、どうにもなりません。僕からすれば、「自分の嗜好や立ち位置を明確にせず何かについて語ること」ほど気持ち悪いことはありません。

「世の中ではこう。」

「◯◯ではこう言われている。」

と言う文言にどうしても馴染めません。「それは、あなたが《世の中ではこう》と思っているということだけですよね?」と心の中で思っています。そのあなたをまずははっきりさせましょうよ。あなたが何をどう考えて、どこに軸足を置いているどういう存在か。立場を。文字通りスタンスを。傍観者なら傍観者で構わないから。

そうした素性がぼかされたり、スタンスがあっちこっちに移り変わるトークには我慢ができません。

なので、自分が喋る時はまず自分のことを話してしまいます。

ワークショップなどで講師を務める時も、大体の場合、自分の経歴や芝居観の説明に時間をかけてしまいます。それは自慢したい訳じゃなく、受け手が僕という人間を公正に(?)ジャッジできるようにと思って話しています。僕がどういう人間で、どういう考え方の偏りがあって、どう演劇と関わってきたか晒すことで、ワークショップで話す言葉を吟味してもらおうと思っているからです。

しかし、ある時それを「なんで自分のことばかりアピールするの?」と言われ愕然としました。あれ?そうなるの?という感じです。

まあ愕然とはしましたが、だから変えるかと言われれば変えてません。性分なので仕方ないのです。

そうしたかけ違いがあちこちで起こるんですね。おそらく。

シェイクスピアに取り組むことも、オリジナルのコメディを作ることも、同じエンターテイメントを作りたいという想いからスタートしています。ただのエンターテイメントじゃなく、今見る価値のある、現代的なエンターテイメントを。現代的とは何か?なんてとてつもなく難しい問題ですが、僕にとって今のそれは「夢を見せないこと」です。それは物語の中身で「現代的な問題を取り上げること」とは限らないと考えています。

多くの「現代的な問題を取り上げた舞台」の決定的な物足りなさは、それが“観客に投げかけられている”と言う構造が、舞台⇄観客と言う構造そのものが現代を捉えているとは言い難いからです。

どんなに現代的な問題を提起しても、そしてそれを観客に真摯に考えて貰えたとしても、その時点で何かが足りない。

言うなれば、「劇場で提起されるまでその問題に考えが辿り着いていない」こと『そのもの』をどう捉えているか、と言うことです。そこまで踏み込んでいてこそ『現代的である』と言えると自分は考えます。フィクションに心躍らすことも、優しい夢に浸ることも人生を生きていく上で必要要素だと思います。だからこそ、そこに疑いも持っていたい。フィクションというすぐれた発明をより延命させるために。

その具体的な方法論がある訳じゃないのですが、ヒントは捕まえているつもりです。それはもちろん『四月になれば彼女は彼は』や『サウンズ・オブ・サイレンシーズ』で試し、掴んだ糸口です。

来年はこの糸口から新しい作品を弦巻楽団で書き下ろします。2年ぶりの新作です。乞うご期待。

そして今年唯一の新作がいよいよ来月に迫って来ました。

苫前町民劇10周年記念公演『結婚しようよ』です。

稽古は順調に進み、衣装や音楽も仕上がってきました。

苫前を舞台にした、結婚式場(の、舞台裏)で起こるドタバタコメディです。しかし、ここでも「夢を見るためではない」弦巻イズムは働いています。

前回のエントリーでも書きましたがこの作品、僕の『初』が幾つか入っています。

その一つは、とても大きな一つはこれが『家族』を描いているということです。

え?と思うなかれ。弦巻は実はこの20年、50作以上脚本を書いてきて『家族』が描かれたことは一度もありません。テーマが、とかじゃなく現れたことがありません。まあ厳密に言えば「ある」んですが、それは子供が死んでいる、親が死んでいる、と言った、語弊はありますが「機能不全」に陥っている場合のみで、家族が勢ぞろいして現れる、お話を、なんと、今まで、1作も、

1作も……!!!

書いたことがなかった……………!!!!!!

禁じてたとか拘ってた訳じゃありません。なんとなく、当たり前のように出てきませんでした。それが今回、苫前町の皆さんを取材させてもらっている内にこれは書く必要があると感じました。家族になること、家族を増やすこと、そこを描かないとこの町を描いたことにはならない、そう思いました。苫前の皆さんが書かせてくれた、とも言えます。

ここでも教えられることばかりです。演劇そのものを学び直してる気がします。

たくさんの方に観てもらいたい。

きっと驚くほど豊かな舞台になるはずです。

盛りだくさんで、全て観てください!

とは気が引けますが、全て観てください!

全て観てくれれば、弦巻楽団が目指してる場所が分かっていただけるのでは…と思います。

舞台に立つの面々。バトル!

膨大なセリフと悪戦苦闘。

バトル!

劇場の稽古でもバトル!

ポスターの前でパシャり。

今回のチラシは舞台に立つの常連であり、「ナイトスイミング」でタケミナを演じた佐久間泉真がデザイン。似顔絵は都内の大学生で絵描きの狐さんが27名(プラス弦巻)分を描いてくれました。

苫前の夕暮れ。

『結婚しようよ』の新婦親族一同。

稽古も盛り上がってきました!!

アートステージが開幕!ということでTGRブースに『ユー・キャント・ハリー・ラブ!』のシェイクスピア先生が降臨!!

10月は他にも個人的に旅行をしてました。

人生初のディズニーランド、初の歌舞伎座。

どちらも一流の芸能を堪能。

神保町で今回の収穫。

奥さんを伴って下北沢の観劇三昧へ!黒澤世莉君と再会。

その黒澤君のお勧めで観劇。信山プロデューサーが来春公演する櫻井さんの名前が!

神田やまいちのカツ丼。

仕事で行った仙台で玉置玲央(柿喰う客)と再会!!

大阪の劇団、万博設計の「駱駝の骨壷」に一回のみゲストで出させていただきました。

ミスター「舞台に立つ」、イノッチが稽古に差し入れを持って参上!!

弦巻の似顔絵。


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